本日開眼
- 小林孝男
- 2018年8月30日
- 読了時間: 2分

江戸時代からの伝統と技を継承している堤人形職人、芳賀強さんの工房を初めてお尋ねしました。足軽だったご先祖がお殿様から拝領した堤町の奥州街道沿いの敷地に、以前はお店と作業場があったそうですが、今は堤町の三本松方面に移転して製作と販売を行っておられます。
子どものころ我が家には素朴な犬の堤人形がありました。そのことを鮮明に記憶しています。私の堤人形のイメージは、子どもの頃に遊んだその犬の人形のイメージでした。今日お店に飾られているたくさんの作品や、ご主人の自信作で、売り物にせずに秘蔵されている笑窪姫(久保姫)の人形を拝見し、堤人形の素晴らしさに開眼させられた思いです。これほど緻密で繊細な彩色が施され丁寧に制作された人形は、もはや玩具ではありません。職人の技が光る伝統工芸品であり、芸術作品です。
芳賀さんが使う顔料は京都から取り寄せるそうですが、素焼きの人形全体に最初に塗る白色の顔料(胡粉)の材料は、カキの殻なのだそうです。四国の海でとれたカキの殻を、何ヶ月も雨ざらしにすることによって塩分を抜き取り、殻の中心の白い部分を使って手間暇かけて顔料が作られているとのこと。堤人形一体の中には、製作に要する緊張感みなぎる何十日もの時間だけではなく、使用される様々な顔料が生み出されるまでの長くゆったりとした時間も、塗りこめられているのです。ますます魅力を感じてしまいます。
これほどまでの伝統と技は、しっかりと継承されなければなりませんが、どうも難しいようです。もうすぐ77歳になられるご主人、ご健康とご長寿を心から願うばかりです。



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