アリメツと人生
- 小林孝男
- 2019年7月26日
- 読了時間: 3分

お菓子を置いている戸棚付近に小さなアリが出没。一匹一匹駆除しても、次から次とどこからともなく湧き出てきます。そうだ、ここはあれを使おうと、「アリメツ」という駆除剤のお世話になることにしました。成分としては猛毒が使われているわけではなく、基本的には砂糖水にホウ酸を溶かしたようなものに過ぎません。使い方は極めてシンプル、容器に液体状のアリメツを入れ、アリの通り道に置いておくだけ。しばらくすると、その容器にアリが群がってきます。美味しいのでしょう。たらふくその液体を食べアリは巣へ戻り、仲間にうまいエサがある情報を伝え、その情報を得たアリたちが、新たに容器に群がって液体をたらふく食べ、巣に戻っていく。それを繰り返している内に、次第に液体中の駆除成分が効きだし、アリの巣ごと駆除されてしまうというちょっと残酷な代物。
以前使った際、大変効き目があったもので、今回も使用しようとツルハで買い求めました。ところが、いざ使おうと思った日の朝から、不思議なことにアリがぴたりと姿を消してしまったのです。私の殺気をアリが察知したのでしょう。
この駆除剤を使用する時、思うことがあります。それは私たちもアリのようになっていないだろうか、ということです。アリたちは自分を死に至らしめるものを、最初はご馳走だと思います。自分にとって良いものだと思い、自分に幸せをもたらすものだと判断するのです。だから一生懸命食べ、仲間にもその情報を伝えます。しかし、時限爆弾のスイッチが入るように、ある時点からその見せ掛けのご馳走は、アリの体の中で正体を現し、アリを死に追いやります。アリたちが気付いた時には後の祭り、アリたちが作ってきたコミュニティーは壊滅です。
私たちもアリのような生き方をしていないでしょうか。これは楽しい、これは便利だ、これは快適だ、これは幸せだと思い込んで、迷わずそこにのめり込み、仲間にもそれを広めていく。そして「これはいい、これはいい」とみんな群がってくる。最初は何ら問題ないのですが、実はその先に思いがけない、悲劇や災いや滅びが、じっと口をあけて「その時」を待ち構えている。そのようなことが起きているのではないかと、考えさせられてしまいます。地球温暖化などの環境問題はその典型なのでしょう。
人生、目先のぱっと見や便利さ、快適さなどに惑わされてはなりません。「いいなあ」と感じたことが、良い実を実らせるとは限りません。その反対に、最初は嫌だと感じること、避けたくなること、しり込みしたくなること、逃げ出したくなるようなことが、最終的にはその人の内に豊かな実をみのらせるなどということが、案外あったりするものなのです。



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