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バタフライ効果と希望

  • 小林孝男
  • 2022年1月5日
  • 読了時間: 3分


 お正月、朝からお屠蘇をいただきながら、Tverでテレビドラマの再放送を楽しみました。年をとっての恩恵の一つは、以前見た番組でも、筋立てや犯人が誰であったのかを、90%は忘れてしまっていることです。ですから面白かったドラマは、再放送で見ても新鮮に面白く見ることができるのです。

 今回見たのは「イチケイのカラス」。東京地方裁判所第3支部第1刑事部(通称イチケイ)の刑事裁判官と書記官たちが織り成す、これまでにない視点からの物語です。竹野内豊主演の作品をしっかり見るのは初めてですが、何ともいい声の俳優さんです。ほれぼれします。

 さて、そのドラマの9話か10話の中で、「バタフライ効果」という言葉が出てきました。初めて聞く言葉なので(正確には、以前見た際も聞いているが忘れてしまっている)、「なんだろう?」と少し気になり調べてみました。アメリカの気象学者エドワード・ローレンスが、50年ほど前に行った講演のタイトル、「予測可能性:ブラジルの蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こすか?」、にちなんで使われ出した用語のようです。

 気象の変化は、気流や海流によって生じます。こういった流動体の動きを予想することで、天気予報がなされますが、これは非常に複雑で難しい作業です。コンピュータの発明と発達が、次第にこの作業を可能にしてきました。

 コンピュータを活用して気象予報行う研究がなされ出したのは、60年ほど前の1960年代です。流動体の動きを予想する複雑な数式に必要な数値を入力し、時間経過と共に状態がどのように変化するかを計算し、その結果をもとにどのような気象になるのかを、数値的に予測する手法です。

 この手法の研究に最初に取り組んだのがローレンスです。研究中、彼は不思議なことを経験しました。同じ数式に同じ数値を打ち込んでコンピュータに2回計算させたのですが、2つの異なる予報が導き出されたのです。これは本来あり得ないことです。そこで入念に調べたところ、入力した2つの数値にわずかな誤差があったことが分かりました。ローレンツが1回目にコンピュータに入力した数値は、0.506127だったのですが、2回目に入力したのは端数を切り捨てた0.506だったのです。0.0001程度の差異、つまりゼロに等しいほどの微小な違いで結果に違いが生じるとは、彼は思っても​みなかったのです。しかし、実際には違いが生じました。しかも、2つの予報の差異は、4日ごとに倍増し、1か月後には原型をとどめないほどの違いを生み出し​ました。結論として明らかになったことは、気象予報に関しては取るに足りないほどの初期の些末な変化が、大きく異なる結果に繋がる可能性がある、ということです。例えて言うならば、「ブラジルの蝶の羽ばたきが、テキサスで竜巻を引き起こす」可能性があるということです。これが「バタフライ効果」です。

 私はこの「バタフライ効果」に希望を見出します。政治の力に期待することができない現実、人間の悪意が様々な事件や問題を生み出している現実、格差がどんどん広がり貧富の差が固定化されていく現実。そんな現実の中に生きていると、どうしても諦めが先立ってしまいます。自分の小ささ、弱さ、力の無さを思えば仕方ありません。

 政治や社会の仕組みを変革し世の中を変える、などという大それたことを、私は行うことはできません。しかしどうでしょう。蝶の羽ばたき程度のゼロに等しいことであれば、私にもできそうです。自分自身では、その結果を計算し予想することなどできませんが、小さな行動が巡り巡って、大きなことに結びつく可能性はあるのです。「バタフライ効果」とはそういうことです。無きに等しいほどの小さな良き業が、いつの間にか大きな良きことに結果的に繋がっていく、そんな「バタフライ効果」の可能性に希望を寄せ、新しい年を歩もう。酔い覚めの頭でそう決意したところです。

 
 
 

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